民泊業界の中では「オーナーチェンジ」と呼ばれる運営権限の売買があります。オーナーチェンジでは、民泊オーナー権限を渡す側と引き継ぐ側があり、それぞれにメリットと注意点があります。
今回は民泊のオーナーチェンジについて、その用語の意味からオーナーチェンジのメリット・デメリットなどについて解説していきます。
民泊のオーナーチェンジとは?
民泊のオーナーチェンジとは、その名の通り民泊のオーナー権限が変わることを指します。
所有している不動産の権限移譲に加え、民泊運営の承継も含まれることが民泊のオーナーチェンジの特徴です。
民泊事業の資産も引き継がれる
民泊事業の有形資産としては、物件や内装、家具、家電、消耗品などが該当します。無形資産としては運営マニュアルやノウハウ、過去の売上データ、顧客データなどが該当します。
オーナーチェンジによって物件ごと民泊事業を引き継ぐと、これら全てを引き継ぐような形になります。
オーナーチェンジが起きる背景

参照:https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/business/host/construction_situation.html
民泊新法(住宅宿泊事業法)の成立以降、民泊運営を始めるために必要な住宅宿泊事業への届出は年々増加傾向にあります。一方で、事業廃止件数も増加している状況です。
このように民泊事業を始めたい人と終わらせたい人が多くなっていくほど、オーナーチェンジも増えていきます。
オーナーチェンジの種類・方法
オーナーチェンジにはいくつかの種類・方法があります。
不動産の所有権+民泊の運営権限の売買
不動産の所有者と民泊オーナーが同じ場合に不動産の所有権ごと購入してオーナーチェンジする方法です。不動産価値+営業利益が売買金額となるため、金額は高くなります。
民泊の運営権限の売買
不動産の所有者は別にいて、民泊の運営権限のみを購入してオーナーチェンジする方法です。民泊運営部分のみの売買になるため、他の方法よりも売買金額が低く、リスクを抑えることができます。
不動産の所有者が売買前と同じ条件で民泊運営を許可するかは重要なポイントになります。
法人の売買
民泊を運営している法人ごと買収してオーナー権限を得る方法です。表向きの運営会社は変わらないため、宿泊プラットフォームの評価などはそのまま引き継げますし、あらたに運営に必要な人材の確保も不要になります。
オーナーチェンジのメリット
オーナーチェンジは購入側と売却側それぞれにメリットがあります。
購入側のメリット
民泊の業務は、物件取得から内装・設備投資、運営マニュアル、OTA掲載・集客、管理・ゲスト対応・清掃など、多岐に渡ります。それらを一から作り上げていくのは多くの時間と労力を要します。
オーナーチェンジで民泊運営を引き継ぐ形で始めれば、ほとんどの工程を省くことが可能です。権限移譲に即営業開始、即収益化といったことも可能です。
また、移譲前のデータがあることは大きなリスクヘッジにもなります。一からやる場合は投資分を回収できるかの不安が大きいですが、オーナーチェンジであれば運営を始める前により実態に近い形での収益シミュレーションが可能です。
売却側のメリット
オーナーチェンジで売却する側は、何かしらの意図や悩みがあって売却に踏み切るため、それらの意図や悩みを解消できることがメリットとなります。
例えば、売り上げが伸び悩み管理コストに見合う収益性が出ていない場合や別の事業投資がしたく資金が必要などが挙げられます。
また民泊運営の実績が大きければ、不動産価値に加えて民泊価値も付加できるため、高値で売却することが可能です。
オーナーチェンジのデメリット
デメリットも購入側と売却側それぞれにあります。
購入側のデメリット
オーナーチェンジによる民泊物件の取得は、元のオーナーの方針で運営されていた民泊を引き継ぐ形になるため、そのまま運営する場合には自由度は下がります。もちろん新オーナーの意向に合わせた変更は可能ですが、内装や設備などの変更をかける場合には、出費が大きくなる可能性が出てくることも考えておきましょう。
また、売却されている物件は収益性が低い、老朽化が進んでいるなどの何かしらの問題を抱えている可能性もあります。購入前にしっかりと吟味しないと、コスパが高いと思っていた物件がただの負債となってしまうこともあり得ます。
売却側のデメリット
民泊用物件として売却の場合、買い手が限定的になるため、売買が長期化する可能性があります。民泊物件として売りに出し続けるならば、売れない期間も民泊営業は続けた方が良いので、民泊をなかなか辞められない状況に陥ってしまう可能性もあります。
また、契約内容によっては売却後も一定期間は引き継ぎ等で事業サポートを行わないといけない可能性もあります。事前にマニュアル等を整備しておくか、管理を運営代行会社へ完全委託しておいて、その代行ごと引き継ぐ方法で回避は可能です。

