インバウンド需要が非常に高まっている今、民泊事業は非常に注目を集めるビジネスのひとつです。
今回は民泊運営を初めて始める方へ、民泊運営代行とはどんなサービスか、代行範囲、費用相場などを徹底解説します。民泊運営の申請や準備を自分で行うか、代行会社へ依頼するか考えるヒントになります。
民泊運営代行とは?基礎知識と仕組み
民泊運営代行とは、民泊の運営者であるオーナーに代わり、施設の運営管理を行う会社・サービスです。施設の予約受付からゲスト対応・清掃手配までをワンストップで請け負い、豊富な知識と経験で収益の最大化を目指します。
住宅宿泊管理業者への委託が必須な場合
民泊新法では、家主不在型の住宅宿泊事業を行う際に下記に該当する場合は、住宅宿泊管理業者へ管理を委託しなければなりません。
- 届出住宅の居室の数が、5を超える場合
- 届出住宅に人を宿泊させる間、不在となる場合
住宅宿泊管理業者とは、国土交通大臣の登録を受けて住宅宿泊管理業を行う者のことを指します。
民泊運営代行の範囲
民泊運営代行は完全代行と部分代行があり、それぞれ委託する業務は範囲が異なります。
完全代行
完全代行はその名の通り、民泊の運営をすべて委託することです。居室の内装やコーディネート、必要家具・資材の調達など運営前からサポートを受けられるサービスが手厚い会社もあります。
完全代行の会社へ委託すれば、オーナーは物件の用意と支払いが必要な場合の資金準備だけしておけば何もしなくても民泊が稼働します。
あとは毎月報告があるレポートで収支状況を管理するだけです。
部分代行
部分代行は民泊運営の一部分のみを専門業者へ委託することです。部分代行の委託範囲は、清掃、予約管理、コールセンター、緊急駆けつけなどです。
自分でできる部分と委託した方が良い業務範囲を切り分けることで、民泊運営のコストパフォーマンスの最大化を狙えます。
すでに民泊運営を行っている実績があり、切り分け範囲が明確にわかっている人にはおすすめです。
民泊運営代行の業務内容
主に下記が民泊運営代行の業務内容となります。
- 物件選定・内装・コーディネート
- 届出・行政手続き
- OTA登録・写真撮影
- 予約管理・ゲスト対応
- コールセンター・緊急駆けつけ
- 清掃・リネン手配
物件選定・内装・コーディネート
豊富な運営実績から集客のしやすいエリアや建造物のチョイス、収益性が見込める家賃判断などを行ってくれます。
物件ごとの収益シミュレーションも事前に作成してくれ、納得して物件選定ができます。
物件が決まり、契約が完了したらそのエリアや物件に合わせた内装デザインやコーディネート提案・手配も行います。
行政手続き
民泊事業を開始するためには都道府県知事等への届出が必要になります。運営代行会社は行政書士と提携している場合が多く、それらの手続きも代わりに行ってくれます。
OTA登録・写真撮影
施設準備と届出が完了して民泊事業が行える状態になったら宿泊者を集めなければいけません。
民泊の集客には、AirbnbやBooking.comなどのOTA(Online Travel Agency)を活用します。OTAの登録内容が収益を大きく左右するため、経験豊富な運営代行会社に任せると安心です。
特に重要なのが掲載写真になり、プロのカメラマンによる撮影を実施してくれる代行会社はなお良いでしょう。
予約管理・ゲスト対応
OTAで予約が入ったら宿泊者とのやり取りが発生します。施設の開錠方法・利用方法・注意点などを事前に伝えておくことで無駄なトラブルを防げます。
またインバウンド需要をしっかりと取り込むためには外国語対応も必須です。OTAでは評価制度があり、ユーザーの評価・口コミが今後の収益に大きく影響を与えるため、ゲスト対応も非常に重要です。
緊急駆けつけ
民泊の運営では、原則として緊急時などに30分以内に駆けつけられる人員を確保する必要性があります。これを駆けつけ要件と呼びますが、自治体によってはさらに厳しい場合もあります。
個人で運営をしている場合、この要件を満たすことがかなり難しいため、緊急駆けつけの代行は非常に需要が高いと言えます。
清掃・リネン手配
民泊もホテルと同様にチェックアウト後に施設清掃とリネン交換が必要です。しかし、ホテルのように常駐しているスタッフがいるわけではないので、予約状況に合わせて手配が必要です。
民泊運営代行会社は複数の施設の運営代行していることから、清掃・リネン手配の代行もコスパ高く行うことができます。
民泊運営代行を利用するメリット
民泊運営は24時間の対人サービスとなるため、運営のすべてを自前で行うのには限界があります。特に初めて民泊運営をされる方にとっては必須とも言えるサービスです。主なメリットは下記の通りです。
収益の最大化
宿泊料金の最適な設定はエリアや季節、曜日によっても変わるため、データの少ない状況で最適化を図ることは困難です。
さまざまな施設を取り扱う運営代行会社では、それらのデータが蓄積されているため、料金設定の最適化までの期間を短くできます。すなわち早い段階で収益性を向上させられます。
また、業務内容が細かく分かれている点と24時間対応が必要な点から自前で人員を確保しようとするとコストが膨らみます。運営代行会社は、近隣で複数の施設を管理していることで1施設あたりの業務コストを下げることが可能です。
時間的余裕
24時間営業かつ、業務範囲が広い点から民泊運営において休める時間は予約がない時だけです。しかし、予約がないということは売上がないということになるため、売り上げを上げ続ける以上休むことはできないと言えます。
そのため個人で管理しようとするといずれ無理が生じます。運営代行手数料をコストとして収益シミュレーションを組むことで時間的余裕が生まれ、有意義な経営を可能にしてくれます。
リスクヘッジ
民泊に関する法律は、「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「旅館業法」「特区民泊」があり、それらに則った運営が必要です。これに加え、行政ごとに定められた条例などもあり、さまざまなリスクが潜みます。
また、文化の違う外国人観光客の対応や近隣住民からの苦情など、ルール以外のリスクも多く存在します。
対応経験が豊富な運営代行会社ならそれらのリスクを最小限に抑えてくれます。
民泊運営代行のデメリット・注意点
運営実績が豊富な方や会社であれば運営代行会社に委託すること
手数料と契約期間
運営代行会社への委託手数料相場は15〜25%程度になります。その手数料は売上から計上されることが一般的で、手数料分も見込んだ収益構造にしなければいけません。
また契約期間の縛りがある場合もあり、途中から運営を内製したい場合に縛りのせいでできないといったことも起こり得ます。
ノウハウが蓄積できない
運営代行会社へ完全委託し、運営にまったく関与していないとノウハウを蓄積できません。運営ノウハウを蓄積しておけば、新たに運営施設を増やすさいに部分代行を活用して収益の最大化を狙えますが、蓄積できていない場合にはまた完全委託ですべてのコストがかかってしまいます。
民泊運営代行会社の選び方
民泊運営代行会社を選ぶ際に重要視したい項目を紹介します。
手数料とコスト透明性
手数料の設定は売上に応じた料率形態、毎月一律の固定固定形態、その両方のハイブリッド形態があります。売上状況や管理方針によって最適な形態が異なるため、相談時に収益シミュレーションと見積もりを出してもらうようにしましょう。
またその基本金額以外に追加でかかるコストがないかも事前に把握しておく必要があるため、業務範囲を明確に提示してくれるかも重要です。
代行範囲
手数料と合わせて代行範囲もしっかりと把握しておきましょう。蓋を開けたら一部はオプションで追加コストがかかったといったこともあり得ます。
手数料と代行範囲を踏まえて、収益シミュレーションをしっかり作ってもらうように依頼しましょう。
契約条件
最低契約期間、途中解約金、価格改定ルール、損害賠償責任など、契約書の内容をしっかり読み込んで不明点は質問してクリアにし、同意できない部分は内容変更を依頼しましょう。
管理実績
管理実績が豊富な方がデータに基づいた運営が行えるため、価格の最適化・収益の最大化に期待ができます。一方で、管理数に応じた人員体制が整っているかもチェックしておきたいポイントです。
打ち合わせや問い合わせ時の対応が迅速で丁寧か、また実際の運営時のユーザー対応がしっかりできるだけのリソースがあるか、運営体制をしっかりヒアリングしておきましょう。
報告・レポート
報告やレポートは宿泊ごとか、週次や月次か、またはどのような内容なのかも契約前にチェックしておきたいところです。
とにかく見えない部分がないようにしてくれる会社の方が安心できます。
民泊運営は代行会社へ任せるのが無難
民泊運営には法律の理解や行政への手続きが必要であるため、個人で理解して事業をスタートさせるとかなり不安があります。想定より時間がかかり、代行会社に依頼した方が早く営業開始ができて、収益面でもプラスだったなんてことも多々あります。
オーナーは収益面の管理だけしっかりして、実際の業務は運営代行会社に依頼してしまう方が無難であると言えます。