インバウンド需要の増加から注目を浴びる民泊ビジネス。新規参入を考えている形も多いのではないでしょうか。
今回は民泊運営国家戦略特区の制度「特区民泊」の概要、通常民泊(民泊新法)との違い、大田区で特区民泊を始める方法やコツを徹底解説します。これから大田区で民泊運営を始めたい方は必見です。
特区民泊とは
特区民泊は(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例であり、日本の観光産業を盛り上げることを目的に平成25年12月に制定されました。大田区は日本で初めて特区民泊に指定されたエリアです。
全国の特区民泊の指定地域
特区民泊は2016年1月に東京都大田区でスタートし、現在は大阪府・大阪市・八尾市・寝屋川市・千葉市・新潟市・北九州市が指定地域となっています。
日本人の宿泊者も対象
特区民泊の条文の中に「外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務」といった内容が含まれていることから、特区民泊認定施設は外国人しか利用できないと誤認されることもありますが、日本人宿泊者も問題なく宿泊できます。
特区民泊・住宅宿泊事業法・旅館業の違い
特区民泊 | 住宅宿泊事業 | 旅館業 (管理者が常駐しない場合) |
|
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制度の根拠法 | 国家戦略特別区域法第13条 | 住宅宿泊事業法 | 旅館業法 |
手続き | 認定申請 | 届出 | 許可申請 |
最低利用日数 | 2泊3日以上 | なし | なし |
営業日数制限 | なし | 年間180日まで | なし |
曜日制限 | なし | 小中学校の敷地周囲100メートル以内の区域では、月曜正午から金曜正午まで制限※1, ※2 | なし |
立地 | 「旅館・ホテル」の建築可能な用途地域 | 「旅館・ホテル」の建築可能な用途地域※1 | 「旅館・ホテル」の建築可能な用途地域 |
建物用途 | 住宅、長屋、共同住宅 | 住宅、長屋、共同住宅、寄宿舎 | ホテル・旅館 |
玄関帳場 | 不要 | 不要 | 必要(基準に適合する代替設備を有する場合は不要) |
消防法令※3 | 宿泊所と同等の基準 | 宿泊所と同等の基準 | 宿泊所と同等の基準以上 |
廃棄物の処理 | 事業系ごみとして適切に処理 | 事業系ごみとして適切に処理 | 事業系ごみとして適切に処理 |
宿泊者等の本人確認 | 必要 | 必要 | 必要 |
緊急時体制 | 必要 | 必要 | 必要 |
近隣住民説明 | 事前説明(原則対面) | 事前説明 | 事前説明(原則対面) |
※1 法第11条第1項各号のいずれかに該当する場合(いわゆる「家主不在型」)の制限。法第11条第1項各号のいずれかに該当しない場合(いわゆる「家主居住型」)は、これらの制限が緩和されますが、例外的に諸法令による制限を受ける場合があります。
※2 令和4年1月1日以降適用。
※3 詳細は消防署へご確認ください。
参照元:https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/hoken/minpaku/minpaku.html
特区民泊は収益性が高い運営スタイル
いわゆる一般的な民泊(住宅宿泊事業)の場合、年間営業日数が180日までといった上限が設けられています。一方で、特区民泊ではその上限制限がないため、365日営業が可能で収益の最大化を狙えます。
旅館業法でも365日の営業は可能ですが、手続きが「認定」と「許可」の違いがあることから特区民泊が注目を集めています。
大田区で特区民泊を始める手順
特区民泊での運営をこれから始める方は、申請手続きも民泊運営代行会社へ委託することをおすすめしますが、もし自分で手続きを検討している方は下記手順を参考にしてください。
大田区への事前相談
特区民泊申請のスタートは大田区への事前相談になります。まずは、大田区生活衛生課環境衛生担当へ事前相談を行いましょう。
事前相談を行うためには事前相談予約が必要になるため、下記詳細ページ内にある「民泊事前相談予約ページ」ボタンから予約を取りましょう。
予約がなく、窓口へ直接行っても受け付けてもらえないので注意してください。
相談窓口の所在地:大田区大森西一丁目12番1号(大森地域庁舎6階)
詳細ページ:https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/hoken/minpaku/minpaku.html
所轄の消防署への事前相談
続いて所轄の消防署へも消防法の設備基準などについての事前相談が必要になります。
消防署への事前相談時に施設の平面図と内装に関する資料が必要になるので用意しておきましょう。
また、施設の所在地と名称、運営をする階・号室・床面積、建物全体の階層、延べ面積、構造、階段の数・種類(屋内・屋 外等)、現在の建物全体の消防法上の用途、設置されている消防用設備等といった情報も必要になるため、調べておく必要があります。
大田区の所轄消防署は下記4署になります。
大森消防署 | 03-3766-0119 |
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田園調布消防署 | 03-3727-0119 |
蒲田消防署 | 03-3735-0119 |
矢口消防署 | 03-3758-0119 |
建築審査課への事前相談
最低滞在期間7日未満で営業を行いたい場合は、建築審査課へも事前相談が必要になります。特区民泊で収益性の最大化を見込むなら最低宿泊日数は2泊3日以上としたいため、必要な手続きになります。
下記を持参するようにしましょう。
- 案内図(住宅地図など、場所の特定できるもの)
- 図面(配置図、平面図、立面図等)
- 適合性チェックシート(最低滞在期間7日未満の場合)
- 既存建築物:確認済証、検査済証、確認申請書一式
近隣住民への説明
特区民泊の許可申請前に近隣住民への説明が必須であり、その説明内容を大田区生活衛生課環境衛生担当で事前確認を行います。
近隣住民への説明が必要な範囲は「建物の敷地の境界線から10m以下の範囲」とされています。
説明内容は下記の通りです。
- 事業を営もうとする者の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)
- 事業を営もうとする住宅の所在地(部屋番号まで)、施設の名称(特区民泊の場合のみ)
- 近隣住民からの苦情及び問合せを受けるための連絡先(担当者名、所在地及び電話番号)
- 廃棄物の処理方法(事業系廃棄物としての処理方法)
- 火災等の緊急事態が生じた場合の対応方法カ 当該書面に関する問合せ先の名称、連絡先
- 意見の申出期間
- 近隣住民に理解しやすい表現を用いた事業の内容
認定申請
これらの事前準備を行った後に認定申請ができるようになります。必要書類(後述)を揃えて申請を行いましょう。
申請手数料納付
申請には申請手数料20,500円が必要です。
書類審査・現地調査・認定
認定申請をしたら書類審査・現地調査を経て認定可否となります。認定許可がおりれば認定書が交付され、認定書を施設に表示することで営業が開始できます。
大田区の特区民泊の認定要件
大田区で特区民泊を始められるように審査基準や必要書類についてしっかり理解を深めておきましょう。
大田区特区民泊の審査基準
大田区特区民泊の審査基準で重要となる部分を一部抜粋しました。
- 滞在期間は2泊3日以上
- 一居室の床面積は壁芯で25平方メートル以上
- 清潔な居室提供
- 滞在者に対し施設開始時に施設使用の注意事項が説明できる体制
- 適切な廃棄物処理がされる処置、体制
- 緊急時に外国語による避難や救急医療等に関する情報が迅速に提供される体制
- 外国語の案内の備え付け
- 消防法令で義務付けられている設備等が設置
- 滞在者との賃貸借契約書および約款の用意
- 滞在者名簿を備え付け3年間の保存
大田区特区民泊申請の必要書類
下記が大田区特区民泊申請に必要となる書類です。
- 申請者がわかる書類(個人の場合は住民票の写し。 法人の場合は定款及び登記事項証明書)
- 賃貸借契約及びこれに付随する契約に係る約款(外国語表記とその日本語訳)
- 施設の構造設備を明らかにする図面等
- 近隣住民へ説明した書面と説明の報告
- 苦情及び問合せに適切に対応するための体制及びその周知方法(電話番号やコールセンター名称など)
- 施設で事業ができる証明(不動産登記事項証明書や施設所有者との賃貸借契約書など)
- 消防法令に定める手続きを行ったことが確認できる書類
- その他区長が必要と認める書類
大田区で特区民泊が実施可能な地域
大田区は全国でも数少ない特区民泊指定地域となっていますが、大田区全域で特区民泊営業が可能なわけでなありません。大田区で特区民泊の実施可能地域は下記図の黄色部分となります。
大田区で特区民泊を始めるなら運営代行会社がおすすめ
ここまで書いてきたように特区民泊は認定制となるため申請は少しややこしい印象があります。個人で行うと想定よりも時間と労力を要し、認定されないといった最悪の結末もあります。
またせっかく営業開始ができる状況なのに、申請ができずに営業開始ができないと、その期間は売上が立たずに費用だけがかさんでいきます。
申請に不慣れな場合はコストをかけてでも代行会社などへ依頼することをおすすめします。